「イクメン知事」。広島県の湯崎英彦知事はそう呼ばれている。2年前に第3子が生まれた後、部下の勧めで随時公務を休んだ。計20時間の育休だったが、以後、男性の育休取得率は同県内で急激に伸びている▲さぞ得意満面かと思いきや、「ボロクソに言われましてね」と悔しそうだ。批判の矢は、3男4女の子だくさんで知られる橋下徹・大阪府知事(現大阪市長)から飛んできた。「世間を知らなすぎる。まずは施策で国民全体が育休を取れる環境整備をすべきだ」。知事から休んでどうする、というのだ▲「余計なお世話」と反論したが、発信力では橋下氏にかなわない。しかし、劣勢と見られた湯崎氏の応援団に隣県の知事らが名乗りを上げる。「子づくりは得意でも、(橋下氏は)子育てをしてないんじゃないか」と言うのは平井伸治・鳥取県知事である。40~50代の知事らによる育休論争はおもしろい▲現実はどうか。東京都文京区長、三重県伊勢市長、大阪府箕面市長らも育休を取り、文京区や茨城県竜ケ崎市は特別職の育児休暇取得を条例化している。少しずつだが自治体の育休は広がっている▲橋下氏もその後の記者会見で「公務に支障のない範囲で取るなんてセコイこと言わずに、公務に支障があっても休みますと言うべきだ」と切り返し、自ら仕掛けた論争が育休の関心を盛り上げた効用もしっかりアピールしている▲超高齢社会。医療や介護の財政負担は大きいが、本来なら長寿は喜ばしいものだ。危機の核心はむしろ少子化とそれに伴う人口減少の方にある。「公務に支障があっても休む」くらいの覚悟が必要かもしれない。
毎日新聞 2012年1月29日 1時17分
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