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「物言う株主」が企業経営の慣れ合いを変える

平野英治・メットライフ生命副会長・元日銀理事
内外情勢調査会の講演で成長戦略の政策を語る安倍晋三首相=2013年6月5日、梅村直承撮影
内外情勢調査会の講演で成長戦略の政策を語る安倍晋三首相=2013年6月5日、梅村直承撮影

 アベノミクスの第一の矢である大胆な金融政策が、デフレ脱却に向け一定の成果を上げていることには、ほぼ異論がなかろう。しかし、日本経済復活のために最も必要な構造改革、すなわち第三の矢とされる成長戦略については、いまだはっきりした成果が上がっていないとするのが、一般的な評価だ。本当にそうだろうか。

 確かに、少子高齢化が急速に進行するもとで、潜在成長率がゼロ近傍まで低下しているとされる日本の現状にかんがみると、農業、医療、教育などの分野での規制緩和や、エネルギー改革への取り組み、さらには人口問題そのものへの対応においては、覚悟と決断に欠ける面は否めない。期待された環太平洋パートナーシップ協定(TPP)も、最終合意に向けた道筋には、なお暗雲が漂う。

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メットライフ生命副会長・元日銀理事

1950年生まれ。73年、一橋大学経済学部を卒業後、日本銀行に入行。33年あまりの勤務で国際局長や国際関係担当理事を歴任した。金融政策、国際金融の専門家で、金融機関の監督にも手腕をふるった。2006年に日銀理事を退任後、トヨタ自動車グループのトヨタファイナンシャルサービス株式会社に転じ、14年6月まで副社長を務めた。同年9月、メットライフ生命保険日本法人の副会長に就任。経済同友会幹事としても活動している。