大学ラグビーの勢力図が変わってきた。先日の全国大学選手権では早大、明大、慶大の伝統校が史上初めて一校も準決勝に進めず、一方で筑波大が国立大として初の4強入り。低迷が続いていた関西勢からは天理大が初めて準優勝した。そして最後は実力校の帝京大が3連覇。一体、何が起きているのか?【藤野智成、和田崇】
まず、台風の目となったのは筑波大だ。昨秋の関東大学対抗戦で早大、慶大を破り、さらに12月25日の大学選手権準々決勝では明大に競り勝って伝統3校を撃破する“離れ業”をやってのけた。
その強さの理由の一つとみられているのが、高校の有望選手が筑波大を選ぶケースが増えていることだ。ラグビー部に入る1年生はここ20年ほどは10人台が多かったが、昨年は20人を超えた。その中には、1年前の全国高校大会決勝で引き分け、両校優勝となった東福岡高のFW水上彰太、神奈川・桐蔭学園高の快足WTB竹中祥らもおり、先の両大会では即戦力として活躍した。部には推薦で年間5人程度が入るが、最近は一般入試でも有望選手が集まるという。
その背景を、他校の監督は「不況」に結びつけて語る。「この経済情勢の中、国立大の名誉、学歴に学生が魅力を感じている」と帝京大の岩出雅之監督。今季から慶大を率いた田中真一監督は「国立大は学費が安い。慶応は奨学金制度は利用できるが、学費免除などはない。学生は親の経済的負担を考える」。
元日本代表WTBで明大の吉田義人監督は「時代に先行き不透明感があり、『体育の先生になりたい』という生徒が筑波大に入っている。ウチには体育学部がない」と漏らす。筑波大には体育専門学群(学部)があり、教員志望者を含め、体育を専門に勉強したい学生が集まる。不況が、その傾向を強めているという見方だ。
母校の筑波大を率いて7年の古川拓生監督の話を聞けば、苦労も見える。「学費は安いが、ラグビーが強化指定されている私学のような部活動への大学側の補助はない」。夏の北海道合宿では町民会館に寝泊まりして合宿費を抑え、部員の負担を減らす。その結果、奨学金を受ければ、実家からの仕送りなしで部活動を続けられる。明治や早稲田のような寮もなく、部員はアパートなどで暮らすが「拘束されないからいい」との声も。古川監督は「これが今時なのかな」と感じている。
一方、私学の天理大は、大学の積極支援が実った。高校ラグビーは「西高東低」だが、「西」の高校生まで充実した環境を求め「東」の伝統校に流れる傾向があり、付属の強豪・天理高の生徒も同じだった。同大は03年にラグビー部の寮を新設、08年には専用の人工芝グラウンドを完成させた。「寮生活で一体感が生まれ、食事の管理も容易になった。天理高の主力級が目を向けてくれるようになった」と小松節夫監督。決勝の先発15人中、立川理道主将ら6人が天理高の出身だ。02年から始まったスポーツ推薦制度も奏功。突破力を見せたトンガ出身の両CTBはこの推薦あっての補強だった。
帝京大は、管理栄養士やトレーナーら20人を超えるスタッフをそろえ、月1回の血液検査も。サポート面で伝統校を上回る体制を敷いた。高校生やその親の安心感を高めることが選手の獲得にもつながったという。外国人選手もそろい、大学ラグビー界を引っ張る立場となった。
今や放っておいても伝統校に選手が集まるわけではない。大学スポーツは群雄割拠の時代を迎えている。
毎日新聞 2012年1月28日 12時54分(最終更新 1月28日 15時51分)
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