「わが国唯一の ジュエリーについて学べる 公立の専門学校です」。甲府市の県立宝石美術専門学校(青島みどり校長)は、パンフレットでアピールする。目指すのは、地場産業である宝石のデザインや製造技術、販売ノウハウまで幅広く身につけた人材教育だ。全国的にも珍しい存在である半面、東京都内の私立専門学校などと比べて「自習時間が少ない」「海外の工房などへの修学旅行がない」といった不満を学生から聞いた。県立の同校や他の私立校などを取材した。【岡田悟】
県立の同校は81年開校。10年9月、甲府市東光寺町から同市丸の内1の再開発ビル「ココリ」の7、8階に移転した。ジュエリー学科のみの2年制(各学年約50人)。常勤教員7人の他、県ジュエリーマスターを含む業界スペシャリストらが非常勤講師を務め、宝石産業に従事する社会人向け夜間コースも開講している。
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学生の不満はこうだ。「午後3時50分の授業終了後、最長で同5時半までしか機材を使った自習ができない。私立が実施している教員引率の海外修学旅行もない。安い学費で相応の教育が受けられると期待したのに」
県立の同校によると、学生の自主的な「部活動」として水、木、金曜の授業終了後原則午後5時まで、金属を火で加工したり、コンピューターでデザインした形を樹脂などで立体的に再現する機材「CAD(キャド)」を使った作業などを認めているが、安全管理のため教員が立ち会う必要がある。それ以上の自習を認めるのは、学園祭「宝美祭」や卒業直前など年4回程度という。
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私立専門学校では、「ヒコ・みずのジュエリーカレッジ」(東京都渋谷区)は自習時間を、一定の授業出席回数をこなしている学生に限り、午後4時50分の授業終了後、月2~4回程度、同8時半ごろまで設けている。「東京デザイン専門学校」(同)でもクラフト・アクセサリー科では、授業終了後は学生の要望に応じて最大午後7時ごろまで、教員が立ち会っての自習を認めている。
県立の同校では、現状より柔軟に対応できないのか。
西洋一教授は話す。「授業は朝から8時間もあり、学生はくたびれる。それ以上は健康上良くない。夜遅くなると帰宅するのも危ない。自習を希望する学生は全員ではない。自習したい学生の要望は部活動で充足している」「本校は、学生ではなく、県内宝石業界のニーズに基づいて授業内容を作る。就職後に企業などで受ける指示を理解し、業務を遂行できるよう、宝石業界全般で知らないことがないようにする必要がある」
中込雅事務局長も「技能五輪に入賞者を出すような私立学校とは(教育の)目的が違う」と話した。
一方、私立学校関係者は取材に「我が校でも業界全般に通用する人材育成を目指している。私立でもその位置づけは変わらない。業界のニーズも重要だが、そもそも学ぶのは学生自身だ」と語った。
海外修学旅行についても、この私立2校には、希望者が学費とは別に費用負担する旅行があり、欧州の美術館や職人工房、提携している学校などを見学する。県立の同校には日帰りで、神奈川県箱根町の美術館などを回る「研修旅行」しかない。
県の事業で来月、県内の宝石デザイナーや職人がイタリア・ミラノの宝石専門学校の特設講座を受講する計画がある。西教授は「学校として、今後はこれを参考にする」と述べるにとどまる。
学校を所管する県産業支援課は「私立と単純に比較するのはいかがなものか。自習時間が足りないとのやりとりが学生と(学校との間で)あったとは承知しておらず、提供しているサービスが学生のニーズからかけ離れているという認識はない」とコメントした。
毎日新聞 2012年1月27日 地方版
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